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山歩き仲間 SNSで集める

日経MJ 2014.11.28
趣味・習い事は「パソコン」多く

 個人消費の5割近くを占めるという60歳以上のシニアはどんな暮らしをしているのか。日経MJは60~70代の男女約1300人にアンケートを実施。趣味を大いに楽しみ、インターネットやパソコンを抵抗なく使う「デジタルシニア」の姿が浮かび上がった。60代後半は三世代消費をリードしている。一方で資産に比べ所得の水準は低く、ファッションや住まいへの関心は高くなかった。

 11月下旬の日曜日。60代を中心とする男女8人が埼玉県の狭山湖畔に集まった。「富士山が見える!」と歓声を上げた女性にハイキングを企画した本橋輝久さん(69)は「空がもう少し澄んでいたら東京スカイツリーも見えますよ」と応じた。

 本橋さんは所沢市に住む元公務員。仲間集めに使うのがディー・エヌ・エー(DeNA)の交流サイト(SNS)「趣味人倶楽部」だ。「てるさん」のハンドルネームで月3回ほど山歩きを企画。116人が登録する。「下見もあり、仕事をしていた時より忙しい」

 60代女性はてるさんとの山歩きは2回目。「他の会にも参加し、山歩きのために日本中を旅している」と語る。趣味人倶楽部には約31万人が登録し平均年齢は55歳。旅行やスポーツなど1万近いコミュニティーがあり、毎月2千ほどのイベントが企画される。管理人が承認すれば、会員はイベントに参加できる。

 今回の調査で現在の過ごし方(3つまで回答)を聞くと「趣味」が72.9%と断トツ。リタイアした人だけでは77.2%と仕事を持つ人を10ポイント以上上回った。2番目に多かった「家事」は48.3%、3番目の「仕事」は31.3%だ。よく一緒に行動する人(複数回答)は「配偶者」が67.0%と最多。「趣味の仲間」(25.2%)が続いた。

 現在の趣味や習い事(複数回答)で一番多かったのは「国内旅行」(53.1%)。「海外旅行」も23.7%だった。シニア向け旅行商品は高くても売れる。ANAセールス(東京・中央)が販売する「ANAワンダーアース」は珍しい体験ができるツアーを多くそろえる。

 ドイツのテストコースでポルシェのクルマを試乗できる9日間のツアーは168万円と高額だが4月の発売直後に完売。4~10月の平均単価は93万円と前年同期より10万円以上増えた。シニア向け商品を扱うJTBグランドツアー&サービス(東京・渋谷)は4~9月の旅行者数が5%増。ファースト・ビジネスクラスを選ぶ人が7割だ。

 「趣味全開」「旅行大好き」と並ぶシニアの特徴が「ネットの活用」。趣味・習い事で2番目に多かったのは「パソコン・インターネット」の51.1%。情報収集で重視するもの(複数回答)も「テレビ」(84.4%)や「新聞」(81.1%)と並んで「インターネット」が81.3%だった。76.1%の人がスマートフォンや携帯電話のメール機能を使いこなす。

暇な時間はデータ入力請け負う

 デジタルシニアの関心は消費に限らない。4月に不動産会社を退いた東京都世田谷区の佐久間武史さん(仮名、65)の趣味は「仕事」。ネットで仕事を紹介・提供するクラウドソーシングを利用し簡単な文章を書いたりデータを入力したりするなどの作業を請け負う。時給は微々たるものだが「暇な時間に少しでも社会の役に立てれば」。同サービスを提供するリアルワールドは約65万人のクラウド会員がおり、その約15%が60歳以上だ。

 総務省「通信利用動向調査」によると、2013年末の年齢階層別ネット普及率は60~64歳が76.6%。65~69歳も68.9%で08年末より約31ポイント上昇。ネット上には時間を潰す仕掛けがあり、趣味などにシニアが使うお金は減るかもしれない。

 京王百貨店新宿店。東京都新宿区に住む渡辺朱美さん(69)が長女の望田由美さん(38)一家とやってきた。たまったカードのポイントを金券に変え、はしゃぐ孫の淳斗(まこと)君(4)に5千円ほどする仮面ライダーのおもちゃを買った。

 渡辺さんは月に一度は練馬区在住の長女一家と出かける。おもちゃや食品などを買ってあげ、外食費も持つ。「孫がかわいいいから、お金も出したくなる」と渡辺さん。由美さんも「ここぞとばかりに買ってもらう」。

 今回の調査で「子も孫もいる」人は全体の約6割いたが、子と同居している人は31.0%、孫はわずか4.1%だ。孫と会う時は財布のヒモも緩みがち。子や孫と一緒に楽しむこと(複数回答)は「食事」が76.0%で最多。「ショッピング」(55.6%)や「国内旅行」(47.6%)が続いた。

SNSは三世代消費の起爆剤

 星野リゾート(長野県軽井沢町)はこうしたシニア向けに、「リゾナーレ熱海」(静岡県熱海市)でシニアが孫や三世代で楽しめる「孫旅」プラン(1人3万6千円から)を今年から用意する。

 60代後半は三世代消費に特に意欲的だ。自由に使えるお金の用途(3つまで回答)を「孫のため」とした人は60~64歳で12.2%だが、65~69歳は22.5%に上昇する。「子や孫を楽しませるため」にお金を使いたい人の比率が最も高かったのもこの層だ。

 茨城県牛久市の主婦、古川良子さん(仮名、65)は東京都江東区の長女夫婦宅に月に1週間ほど滞在。2人の孫の服やおもちゃから一家の日用品や食費まで面倒をみる。5月も一家と沖縄を旅し航空券以外は全部負担した。DeNAの増田淳氏は「60代後半はリタイア直後の人も多く元気。三世代消費をけん引するこの『黄金層』は企業の注目の的だ」と指摘する。

 さいたま市の熊谷葉子さん(67)は家族だけが閲覧可能なSNS「ウェルノート」をiPadで見るのが日課。都内に住む孫が花に関心があることを知って植物図鑑を贈った。「プレゼントを催促するメッセージが孫から届くこともある」(熊谷さん)。大丸松坂屋百貨店とパルコは同SNSに注目。運営会社のウェルスタイル(東京・渋谷)と組み、特設ページを設けた。「離れて暮らす孫に何を買えばよいか悩むシニアは多く、SNSは三世代消費の起爆剤になる」と大丸松坂屋の野中健次氏は期待する。
(横山雄太郎、服部良祐)
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この記事の内容は日経MJ2014年11月28日掲載時点のものです。

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