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商談のヒント 0.5秒で相手の本心読む

日経産業新聞 2014.09.09
一瞬表れる本心

 「相手の本心を知りたい」と思ったことのあるビジネスパーソンは多いだろう。気持ちを読み取ることができれば、組織内の人間関係を円滑にしたり、商談を有利に進めたりできる。実は、その本心は顔に一瞬出る「微表情」に表れているという。

 有名アイドルグループの握手会。ファンの1人が「頑張ってください」と声をかけると、握手した女性アイドルは「頑張ります」と笑顔で応じた。映像を巻き戻してもう一度見ると「頑張ります」の「が」を発したほんのわずかな時間、鼻の周りにしわができた。コンサルティング会社のインディゴブルー(東京・港)グループで微表情を研究する、空気を読むを科学する研究所(同)の清水建二社長は「彼女はもう十分頑張っているから『頑張ります』と言いたくなかったのだろう」と解説する。

 微表情とは表れてから消えるまで0.5秒以下しかない、無意識に出てくる抑えられた感情。つまり本心だ。日本では余り知られていないが、心理学の1分野として米国などで研究が進む。「微表情は隠しておきたい感情だけれど、つい出てしまう。出さないようにするのは難しい。一方、それを読みとれば相手の気持ちを察することができる」(清水氏)。女性アイドルの鼻の周りにしわをつくる表情は嫌悪を意味する。自分の「頑張ります」という発言に嫌悪感を持っていたとみられる。

表情のパターンは万国共通

 微表情を読み取るには、まず表情のパターンを理解する必要がある。清水氏によると、人種や性別などに関係なく表れる万国共通の7つの表情があるという。女性アイドルが出した嫌悪のほか、幸福、軽蔑、恐怖、怒り、悲しみ、驚きである。嫌悪は鼻の周りにしわができる、軽蔑はどちらかの口角が上がる、というような特徴がある。これらは微表情としても表れる。

 例えば、商談のとき、相手が「この価格は魅力的ですね。会社に戻って検討します」と話したとする。発言の最中に一方の口角が上がって軽蔑の微表情が表れたら、相手の言葉をうのみにしてはいけない。他社がより良い条件を提示しているため、こちらを見下している可能性がある。ここで引き下がったら他社に取引を奪われるかもしれない。値下げを示唆するなどして相手の出方を見てみよう。

 営業していて相手の鼻の周りにしわができたら嫌悪のサイン。売り込んでいる商品に関心はない。別の商品に会話を移そう。飛び込みの営業ならまだしも、顔なじみの営業担当者を前にはっきりと嫌そうな顔をする日本人は少ない。微表情を読み取れれば、営業の効率アップにつながる。清水氏は「商品や説明書に目を向けていては商機を失いかねない。相手をしっかり見る必要がある」と指摘する。

 部下に仕事を指示したら、部下は「承知しました」と答えながら眉がこわばって額の中央にしわをつくった。恐怖の微表情のため、部下は内容を理解できていないか、その仕事を難しいと感じているおそれがある。分かったかどうかや何が不安なのかを確認したほうがいい。

次は相手の癖を把握

 7つの表情を覚えたら、次は相手の癖を把握する。鼻をすするとき、鼻の周りにしわができる人がいる。これを嫌悪と勘違いしないようにしたい。最後は練習。インターネットの動画サイトにあるインタビューを一時停止しながら繰り返し見て、7つの表情が表れていないか確認する。反復練習していくうち、より多くの微表情を認知できるようになる。

 もちろん人間の表情は7つに限らない。恥じらいや罪悪感、誇りなど様々。これらはまだ研究の途上にあり、国などによって表情の特徴が違う可能性があるという。

 清水氏は微表情をほぼ100%認知できる。1時間余りの取材で、記者には20回ほどの微表情が出たという。相手の本心が分かってしまい、人間不信になってしまわないだろうか。清水氏は「『人間はこんなに他人をバカにしたり、見下したりしているのか』と思ったこともあったが、いまでは相手をよく知ることができると考えている」と話す。このときの清水氏に微表情は表れなかった気がした。
 
 微表情は私生活でも活用できる。円満な家庭では隠す感情がないため、微表情を表す家族はいない。夫婦げんかのとき、どちらかに軽蔑や嫌悪の微表情が表れたら危険シグナル。軽蔑だと互いに尊敬しあう関係でなくなっていると感じており、嫌悪だとけんかすらしたくないと感じている。「別れたくないならば、自分の言い分を口に出すことを直ちにやめて謝ったほうがいい」(清水氏)という。(黒井将人)
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この記事の内容は日経産業新聞2014 年9月9日掲載時点のものです。

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